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横浜地方裁判所 平成5年(わ)1687号 判決

本籍

神奈川県茅ヶ崎市幸町五九三六番地

住居

同市松が丘一丁目六番三四号

会社役員

武藤公一

昭和一八年九月二九日生

本籍

神奈川県茅ヶ崎市美住町六四八五番地

住居

同市美住町一三番五三号

会社役員

佐藤敏人

昭和一六年三月一六日生

本籍

神奈川県茅ヶ崎市十間坂二丁目四七一八番地

住居

同市柳島海岸七番六号

会社役員

古谷義一

昭和二〇年一月一二日生

被告人三名に対する各政治資金規正法違反、所得税法違反、被告人武藤公一に対する有印私文書偽造・同行使各被告事件

主文

被告人武藤公一を懲役一年六月及び罰金五〇〇万円に、

被告人佐藤敏人を懲役一年及び罰金三〇〇万円に、

被告人古谷義一を懲役一年及び罰金二〇〇万円にそれぞれ処する。

被告人三名において右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。

被告人三名に対し、この裁判確定の日からいずれも三年間それぞれその懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人武藤公一は、昭和六二年四月三〇日から平成五年六月二二日まで神奈川県議会議員であった横田光弘を推薦し、支持する政治団体「湘南政経懇話会」、「明るい神奈川を創る会」及び「国際経済研究会」の三団体に関し、「湘南政経懇話会」については、代表者、「明るい神奈川を創る会」及び「国際経済研究会」の両団体については、会計責任者として、右三団体に対する寄附金の受入れ等の業務に従事していたもの、被告人佐藤敏人は、「国際経済研究会」の代表者として、同団体に対する寄附金の受入れ等の業務に従事していたもの、被告人古谷義一は、「明るい神奈川を創る会」の代表者として、同団体に対する寄附金の受入れ等の業務に従事していたものであるが

第一  被告人三名は、横田光弘と共謀の上

一  神奈川県選挙管理委員会に提出する前記三政治団体の収支報告書に虚偽の記入をしようと企て

1 同選挙管理委員会に提出する平成二年分の「湘南政経懇話会」、「明るい神奈川を創る会」及び「国際経済研究会」の収支報告書を作成提出するに当たり

(一) 平成三年三月ころ、神奈川県茅ヶ崎市矢畑九九五番地三〇株式会社武藤電気商会事務所などにおいて、「湘南政経懇話会」の収支報告書の収入項目寄附の内訳欄に、実際には、別紙一覧表一「寄附名義人」欄記載の金子ユリほか一六名からの寄附はなかったのにかかわらず、同表「寄附年月日」欄記載のとおり、平成二年一一月七日から同年一一月二六日までの間、前後一七回にわたり、同人らから、同表「寄附名目額」欄記載のとおり、五〇万円ないし一五〇万円の各寄附があった旨虚偽の記入をし、これを平成三年三月二〇日、横浜市中区日本大通一番地所在の神奈川県選挙管理委員会に提出し

(二) 平成三年三月ころ、右武藤電気商会事務所などにおいて、「明るい神奈川を創る会」の収支報告書の収入項目寄附の内訳欄に、実際には、別紙一覧表二「寄附名義人」欄記載の金子和雄ほか一七名からの寄附はなかったのにかかわらず、同表「寄附年月日」欄記載のとおり、平成二年一〇月一一日から同年一一月一六日までの間、前後一八回にわたり、同人らから、同表「寄附名目欄」欄記載のとおり五〇万円ないし一五〇万円の各寄附があった旨虚偽の記入をし、これを平成三年三月二五日、右神奈川県選挙管理委員会に提出し

(三) 平成三年三月ころ、右武藤電気商会事務所などにおいて、「国際経済研究会」の収支報告書の収入項目寄附の内訳欄に、実際には、別紙一覧表三-一「寄附名義人」欄記載の金子和雄ほか一八名からの寄附はなかったのにかかわらず、同表「寄附年月日」欄記載のとおり、平成二年九月三日から同年一一月一六日までの間、前後一九回にわたり、同人らから、同表「寄附名目額」欄記載のとおり、五〇万円ないし一五〇万円の各寄附があった旨虚偽の記入をし、更に、同収支報告書の支出項目政治活動費の内訳欄に、実際には、別紙一覧表三-二「組織活動費名義人」欄記載の武藤公一ほか一一名に対し、組織活動費の支出がなかったのにかかわらず、同表「組織活動費年月日」欄記載のとおり、平成二年九月九日から同年九月二九日までの間、前後一二回にわたり、同人らに対し、同表「組織活動費名目額」欄記載のとおり、八〇万円ないし一五〇万円の組織活動費の支出があった旨虚偽の記入をし、これを平成三年三月二六日、右神奈川県選挙管理委員会に提出し

2 前記選挙管理委員会に提出する平成三年分の「湘南政経懇話会」、「明るい神奈川を創る会」及び「国際経済研究会」の収支報告書を作成提出するに当たり

(一) 平成四年三月ころ、前記武藤電気商会事務所などにおいて、「湘南政経懇話会」の収支報告書の収入項目寄附の内訳欄に、実際には、別紙一覧表四-一「寄附名義人」欄記載の荒川誠之助ほか二二名からの寄附はなかったのにかかわらず、同表「寄附年月日」欄記載のとおり、平成三年八月一〇日から同年一二月三〇日までの間、前後三七回にわたり、同人らから、同表「寄附名目額」欄記載のとおり、二〇万円ないし一五〇万円の名寄附があった旨虚偽の記入をし、更に、同収支報告書の支出項目政治活動費の内訳欄に、実際には、別紙一覧表四-二「組織活動費名義人」欄記載の金子和雄ほか一五名に対し、組織活動費の支出がなかったのにかかわらず、同表「組織活動費年月日」欄記載のとおり、平成三年二月一五日から同年同年一二月二八日までの間、前後二三回にわたり、同人らに対し、同表「組織活動費名目額」欄記載のとおり、二〇万円ないし一五〇万円の組織活動費の支出があった旨虚偽の記入をし、これを平成四年三月二五日、右神奈川県選挙管理委員会に提出し

(二) 平成四年三月ころ、右武藤電気商会事務所などにおいて、「明るい神奈川を創る会」の収支報告書の収入項目寄附の内訳欄に、実際には、別紙一覧表五-一「寄附名義人」欄記載の棚橋秀彦ほか二二名からの寄附はなかったのにかかわらず、同表「寄附年月日」欄記載のとおり、平成三年八月一〇日から同年一二月一七日までの間、前後三七回にわたり、同人らから、同表「寄附名目欄」欄記載のとおり二〇万円ないし一五〇万円の各寄附があった旨虚偽の記入をし、更に、同収支報告書の支出項目政治活動費の内訳欄に、実際には、別紙一覧表五-二「組織活動費名義人」欄記載の宮沢博ほか一二名に対し、組織活動費の支出がなかったのにかかわらず、同表「組織活動費年月日」欄記載のとおり、平成三年七月一五日から同年一〇月三〇日までの間、前後二二回にわたり、同人らに対し、同表「組織活動費名目額」欄記載のとおり、二〇万円ないし一五〇万円の組織活動費の支出があった旨及びそれぞれの会社に各々の名目で支払った事実はなかったのにかかわらず、平成三月一月二〇日株式会社茅ヶ崎魚市場海岸販売所に対し、地域研究費として「八九六、五四〇円」、同年三月一一日株式会社ふおと神奈川に対し、パンフレット印刷代として「三一八、二〇八円」、同年七月二五日平塚富士見カントリークラブに対し、組織育成ゴルフ代として「九三、七七五円」の各支出があった旨の虚偽の記入をし、これを平成四年三月三〇日、右神奈川県選挙管理委員会に提出し

(三) 平成四年三月ころ、右武藤電気商会事務所などにおいて、「国際経済研究会」の収支報告書の収入項目寄附の内訳欄に、実際には、別紙一覧表六-一「寄附名義人」欄記載の木村長司ほか二一名からの寄附はなかったのにかかわらず、同表「寄附年月日」欄記載のとおり、平成三年六月二日から同年一二月七日までの間、前後三六回にわたり、同人らから、同表「寄附名目額」欄記載のとおり、二〇万円ないし一五〇万円の各寄附があった旨虚偽の記入をし、更に、同収支報告書の支出項目政治活動費の内訳欄に、実際には、別紙一覧表六-二「組織活動費名義人」欄記載の金子和雄ほか一二名に対し、組織活動費の支出がなかったのにかかわらず、同表「組織活動費年月日」欄記載のとおり、平成三年三月六日から同年一〇月一〇日までの間、前後一六回にわたり、同人らに対し、同表「組織活動費名目額」欄記載のとおり、二〇万円ないし一五〇万円の組織活動費の支出があった旨及び株式会社マルトに対し、消耗品類の購入費の支出の事実がなかったのにかかわらず、平成三年五月二六日消耗品類の購入費代として「三八九、四六〇円」の支出があった旨虚偽の記入をし、これを平成四年三月三一日、右神奈川県選挙管理委員会に提出し

二1  被告人武藤公一の所得税を免れようと企て、平成二年分及び同三年分の前記各収支報告書に寄附名義人として記載されていた同人につき、前記神奈川県選挙管理委員会から寄附金控除のための書類を入手し、同人が所得控除の対象となる特定寄附金を支出したように装って所得の一部を秘匿した上

(一) 同人の平成二年分の正当な課税される所得金額は二、一三七万円、これに対する所得税額は六七八万五、〇〇〇円、所得税額から納付済みの源泉徴収税額を控除した実際納付税額は一二一万二、一〇〇円であったのにかかわらず、平成三年二月二一日、神奈川県藤沢市朝日町一番一一号所在の藤沢税務署において、同税務署長に対して所得税確定申告をするに際し、架空の寄附金控除金額を計上した上、課税される所得金額は一、六五四万五、〇〇〇円、これに対する所得税額は四七一万八、〇〇〇円、実際納付税額はマイナス八五万四、八二〇円である旨を記載した虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の実際納付税額と申告に係る虚偽過少の納付税額との差額二〇六万六、九〇〇円を免れ

(二) 同人の平成三年分の正当な課税される所得金額は二、八八五万二、〇〇〇円、これに対する所得税額は一、〇五二万六、〇〇〇円、所得税額から納付済みの源泉徴収税額を控除した実際納付税額は二二七万八〇〇円であったのにかかわらず、平成四年二月二五日、右税務署において、同税務署長に対して所得税確定申告をするに際し、架空の寄附金控除金額を計上した上、課税される所得金額は二、三九二万七、〇〇〇円、これに対する所得税額は八〇六万三、五〇〇円、実際納付税額はマイナス一九万一、六七五円である旨を記載した虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の実際納付税額と申告に係る虚偽過少の納付税額との差額二四六万二、四〇〇円を免れ

2  被告人佐藤敏人の所得税を免れようと企て、前同様、平成二年分及び同三年分の前記各収支報告書に寄附名義人として記載されていた同人につき、前記神奈川県選挙管理委員会から寄附金控除のための書類を入手し、同人が所得控除の対象となる特定寄附金を支出したように装って所得の一部を秘匿した上

(一) 同人の平成二年分の正当な課税される所得金額は二、〇四一万八、〇〇〇円、これに対する所得税額は六〇七万四、四〇〇円、所得税額から納付済みの源泉徴収税額を控除した実際納付税額はマイナス二一七万三、〇四〇円であったのにかかわらず、平成三年三月一四日、前記藤沢税務署において、同税務署長に対して所得税確定申告をするに際し、架空の寄附金控除金額を計上した上、課税される所得金額は一、五九二万八、〇〇〇円、これに対する所得税額は四二三万六、六〇〇円、実際納付税額はマイナス四〇一万八四〇円である旨を記載した虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の実際納付税額と申告に係る虚偽過少の納付税額との差額一八三万七、八〇〇円を免れ

(二) 同人の平成三年分の正当な課税される所得金額は六、八九五万四、〇〇〇円、これに対する所得税額は二、〇七四万八、五〇〇円、所得税額から納付済みの源泉徴収税額を控除した実際納付税額は九四五万四、七〇〇円であったのにかかわらず、平成四年三月一六日、右藤沢税務署において、同税務署長に対して所得税確定申告をするに際し、架空の寄附金控除金額を計上した上、課税される所得金額は六、四四六万四、〇〇〇円、これに対する所得税額は一、八五〇万三、五〇〇円、実際納付税額は七二〇万九、七〇〇円である旨を記載した虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の実際納付税額と申告に係る虚偽過少の納付税額との差額二二四万五、〇〇〇円を免れ

3  被告人古谷義一の所得税を免れようと企て、前同様、平成二年分及び同三年分の前記各収支報告書に寄附名義人として記載されていた同人につき、前記神奈川県選挙管理委員会から寄附金控除のための書類を入手し、同人が所得控除の対象となる特定寄附金を支出したように装って所得の一部を秘匿した上

(一) 同人の平成二年分の正当な課税される所得金額は一、六五四万四、〇〇〇円、これに対する所得税額は四三六万一、四〇〇円、所得税額から納付済みの源泉徴収税額を控除した実際納付税額はマイナス二〇万四、六一四円であったのにかかわらず、平成三年三月一三日、前記藤沢税務署において、同税務署長に対して所得税確定申告をするに際し、架空の寄附金控除金額を計上した上、課税される所得金額は一、三五五万四、〇〇〇円、これに対する所得税額は三〇一万五、九〇〇円、実際納付税額はマイナス一五五万一一四円である旨を記載した虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の実際納付税額と申告に係る虚偽過少の納付税額との差額一三四万五、五〇〇円を免れ

(二) 同人の平成三年分の正当な課税される所得金額は七九六万一、〇〇〇円、これに対する所得税額は一四八万八、三〇〇円、所得税額から納付済みの源泉徴収税額を控除した実際納付税額はマイナス一七二万二、六八五円であったのにかかわらず、平成四年二月二八日、右藤沢税務署において、同税務署長に対して所得税確定申告をするに際し、架空の寄附金控除金額を計上した上、課税される所得金額は五五一万八、〇〇〇円、これに対する所得税額は八〇万三、六〇〇円、実際納付税額はマイナス二四〇万七、三八五円である旨を記載した虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の実際納付税額と申告に係る虚偽過少の納付税額との差額六八万四、七〇〇円を免れ

4  別紙一覧表七「納税義務者」欄記載の武藤仁一ほか一四名と更に各共謀の上、同人らの平成二年分の所得税を免れようと企て、前同様、同年分の前記収支報告書中に寄附名義人として記載されていた同人らにつき、前記神奈川県選挙管理委員会から寄附金控除ための書類を入手し、同人らが所得控除の対象となる特定寄附金を支出したように装って所得の一部を秘匿した上、同人らの同年分の正当な課税される所得金額、これに対する所得税額及び所得税額から納付済みの源泉徴収税額を控除した実際納付税額は、それぞれ、同表「正当税額等『課税される所得金額』、『所得税額』、『納付税額』」各欄記載のとおりの額であったのにかかわらず、同表「所得税確定申告状況『申告年月日』、『申告書提出税務署』」欄記載のとおり、平成三年二月二一日から同年三月一五日までの間、前後一五回にわたり、前記藤沢税務署ほか二か所において、各所轄税務署長に対して前記一五名の納税義務者の各所得確定申告をするに際し、各人につき、架空の寄附金控除金額を計上した上、課税される所得金額、これに対する所得税額及び実際納付税額は、それぞれ、同表「所得税確定申告状況『課税される所得金額』、『所得税額』、『納付税額』」各欄記載のとおりである旨を記載した虚偽過少の所得税確定申告書を各提出し、正規の実際納付税額と申告に係る虚偽過少の納付税額との差額(同表「ほ脱額」欄各記載のとおり、合計一、三四一万七、三〇〇円)を免れ

5  別紙一覧表八「納税義務者」欄記載の内田正勝ほか一八名と更に各共謀の上、同人らの平成三年分の所得税を免れようと企て、前同様、同年分の前記収支報告書中に寄附名義人として記載されていた同人らにつき、前記神奈川県選挙管理委員会から寄附金控除のための書類を入手し、同人らが所得控除の対象となる特定寄附金を支出したように装って所得の一部を秘匿した上、同人らの同年分の正当な課税される所得金額、これに対する所得税額及び所得税額から納付済みの源泉徴収税額を控除した実際納付税額は、それぞれ、同表「正当税額等『課税される所得金額』、『所得税額』、『納付税額』」各欄記載のとおりの額であったのにかかわらず、同表「所得税確定申告状況『申告年月日』、『申告書提出税務署』」欄記載のとおり、平成四年二月二三日から同年三月一六日までの間、前後一九回にわたり、前記藤沢税務署ほか三か所において、各所轄税務署長に対して前記一九名の納税義務者の各所得税確定申告をするに際し、各人につき、架空の寄附金控除金額を計上した上、課税される所得金額、これに対する所得税額及び実際納付税額は、それぞれ、同表「所得税確定申告状況『課税される所得金額』、『所得税額』、『納付税額』」各欄記載のとおりである旨を記載した虚偽過少の所得税確定申告書を各提出し、正規の実際納付税額と申告に係る虚偽過少の納付税額との差額(同表「ほ脱額」欄各記載のとおり、合計二、一九〇万八、六〇〇円)を免れ

もって、いずれも不正の方法で所得税を免れ

第二  被告人武藤公一は、前記のとおり、横田光弘を推薦し、支持する三政治団体に対する寄附金の受入れ等の業務に従事していたものであるが、前記のとおり、各団体の収支報告書を神奈川県選挙管理委員会に提出するに際し、これに虚偽の寄附金額を記入したことから、それに見合う支出をしたように装うため、収支報告書に添付すべきこととされている支出に係る領収証の写しを偽造して行使しようと企て、平成四年三月二〇日ころ、神奈川県茅ヶ崎市矢畑九九五番地三〇株式会社武藤電気商会事務所などにおいて、同社が、取引先等である、株式会社茅ヶ崎魚市場海岸販売所、株式会社ふおと神奈川、平塚富士見カントリークラブ及び株式会社マルトから平成二年から同四年にかけて交付されて保管していた、各社の社名が記載され、かつ、社印が押捺されている領収証四通を右武藤電気商会備え付けの複写機で複写した上、右複写に係る右株式会社茅ヶ崎魚市場海岸販売所名義の領収証の写しの宛て名欄の「株式会社武藤電気」額面欄の「1,356,098」とある記載部分及び収入印紙貼付欄の一枚分の印紙部分に、右株式会社ふおと神奈川名義の領収証の写しの宛名欄の「武藤電気」、発行日欄の年の「4」の部分に、右株式会社マルト名義の領収証の写しの領収証番号欄の「G・N0012842」、発行年月日欄の「平成2 3 4」、宛名欄の「(株)武藤電気商会」、額面欄の「¥66610」、但し書欄の「品代倉庫棚」、取扱者欄の「猪刈」の部分に、それぞれ白色修正液を塗布して更に右複写機で複写紙、宛名欄等白地の領収証写しを作成した上、同日、同所において、行使の目的をもって、ほしいままに、右作成に係る宛名欄等白地の領収証写しのうち、株式会社茅ヶ崎魚市場海岸販売所発行名義の領収証の写しの発行年月日欄に「3 1 20」、宛名欄に「明るい神奈川を創る会」、金額欄に「896,540」と、株式会社ふおと神奈川発行名義の領収書の写しの発行年月日欄の年に「3」、宛名欄に「明るい神奈川を創る会」と、平塚富士見カントリークラブ発行名義の領収証の写しの宛名欄に「明るい神奈川を創る会」と、株式会社マルト発行名義の領収証の写しの発行年月日欄に「3 5 26」、宛名欄に「国際経済研究会」、額面額に「¥389460」といずれもボールペンを用いて冒書し、右マルト名義の領収証の写しの取扱者欄に「大槻」と刻した印鑑を押捺した上、更にこれらを前記複写機で複写し、もって株式会社茅ヶ崎魚市場海岸販売所、株式会社ふおと神奈川、平塚富士見カントリークラブ作成名義の明るい神奈川を創る会宛て領収証を写し及び株式会社マルト作成名義の国際経済研究会宛て領収証の写し合計四通の偽造を順次挙げた上

一  平成四年三月三〇日、前記神奈川県選挙管理委員会において、同選挙管理委員会に「明るい神奈川を創る会」の収支報告書を提出するに際し、右偽造に係る額面「八九六、五四〇円」、同「三一八、二〇八円」及び同「九三、七七五円」の領収証の写し各一通を同収支報告書末尾に添付し、これを前記古谷義一をして、同選挙管理委員会に提出して行使し

二  同月三一日、右神奈川県選挙管理委員会において、同選挙管理委員会に「国際経済研究会」の収支報告書を提出するに際し、前同様に右偽造に係る額面「三八九、四六〇円」の領収証の写し一通を同収支報告書末尾に添付し、同選挙管理委員会に提出して行使し

たものである。

(証拠の標目)

全事実につき

一  被告人武藤公一の当公判廷における供述

一  甲2、4(検察官証拠等関係カード証拠番号、以下同じ)

一  乙2、3、5、6

第一の全事実につき

一  被告人佐藤敏人及び同古谷義一の当公判廷における各供述

一  甲15、18、36、55、56、57、58、59

一  乙11、12、14、19、21

第一の一の全事実につき

一  甲50

第一の一の全事実、第二の全事実につき

一  甲3、5

第一の一の全事実、第一の二の4、5につき

一  甲16、17、19、20、21、22、23、24、25、29

第一の一の全事実、第一の二の4につき

一  甲30、32、33

第一の一の全事実、第一の二の5につき

一  甲34、35

第一の一の1の(一)(二)(三)、第一の二の4につき

一  甲27

第一の一の2の(一)(二)(三)、第一の二の5につき

一  甲37、38、40、41、42、44、46

第一の二の全事実につき

一  甲6、11、13、14

第一の二の1の(一)(二)につき

一  甲12

第一の二の1の(一)、2の(一)、3の(一)、4につき

一  甲7、8

第一の二の1の(二)、2の(二)、3の(二)、5につき

一  甲9、10

第一の二の4、5につき

一  甲26

第一の二の4につき

一  甲28、31、32

第一の二の5につき

一  甲39、43、45

第二の全事実につき

一  甲51、52、53、54

(法令の適用)

一  罰条等

(1)  被告人武藤公一につき

判示第一の一の各所為はいずれも政治資金規正法二五条一項、一二条一項、刑法六〇条に、判示第一の二の各所為はいずれも所得税法二三八条一項、刑法六〇条に、判示第二の所為中、各有印私文書偽造の点はいずれも同法一五九条一項に、各偽造有印私文書行使の点はいずれも同法一六一条一項、一五九条一項にそれぞれ該当するところ、判示第二の一の三通の偽造有印私文書の一括行使と前記判示第一の一の2の(二)の内容虚偽の収支報告書の提出とは一個の行為で四個の罪に、判示第二の二の一通の偽造有印私文書の行為と前記判示第一の一の2の(三)の内容虚偽の収支報告書の提出とは一個の行為で二個の罪名に、それぞれ触れる場合であり、右有印私文書の各偽造とその各行使との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、同法五四条一項前段、後段、一〇条により結局判示第一の一の2の(二)及び判示第二の一とを、判示第一の一の2の(三)及び判示第二の二とをそれぞれ一罪としていずれも重い偽造有印私文書行使罪の刑(判示第二の一の罪については犯情の重い「株式会社茅ヶ崎魚市場海岸販売所」名義偽造文書の行使罪のそれによる)で処断することとし、所定刑中、判示第一の一の1の(一)(二)(三)、判示第一の一の2の(一)の各罪についてはいずれも禁錮刑を、判示第一の二の各罪についてはいずれも懲役刑及び罰金刑を選択することとし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年六月に処し、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告人を罰金五〇〇万円に処する。

(2)  被告人佐藤敏人及び同古谷義一につき

判示第一の一の各所為はいずれも政治資金規正法二五条一項、一二条一項、刑法六〇条に、判示第一の二の各所為はいずれも所得税法二三八条一項、刑法六〇条にそれぞれ該当するところ、所定刑中判示第一の一の各罪についてはいずれも禁錮刑を、判示第一の二の各罪についてはいずれも懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情最も重いところの、被告人佐藤につき判示第一の二の2の(二)の、同古谷につき判示第一の二の3の(一)の各罪の刑にいずれも法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人両名をそれぞれを懲役一年に処し、罰金刑についてはいずれも同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告人佐藤敏人を罰金三〇〇万円に、同古谷義一を罰金二〇〇万円にそれぞれ処する。

二  その他

被告人三名につき、刑法一八条、二五条一項(懲役刑につき)。

(検察官 仁田良行 出席)

(裁判官 安藤正博)

別紙一覧表一

〈省略〉

別紙一覧表二

〈省略〉

別紙一覧表三-一

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別紙一覧表三-二

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別紙一覧表四-一

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別紙一覧表四-二

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別紙一覧表五-一

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別紙一覧表五-二

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別紙一覧表六-一

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別紙一覧表六-二

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別紙一覧表七

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別紙一覧表八

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